前回まで自筆証書遺言について,4回に分けてお話してきました。
今回からは,公正証書遺言についてお話していきたいと思います。
第1回目は公正証書遺言の基本的なことを解説いたします。
公正証書遺言とは
公正証書遺言は,公証人(裁判官・検察官経験者等法務大臣から任命された法律の専門家)が遺言する人の話を聞いて作成するものです。
公正証書遺言を作成するには証人2人の立合いが必要です(民法969条)。また,公正証書遺言は,作成手数料がかかります(公証人手数料令)。
公正証書遺言は,法律の専門家である公証人が作成するので,法律的な不備がなく確実なことから家庭裁判所の検認手続も不要です(民法1004条第2項)。
公正証書遺言は,家庭裁判所での検認が不要
遺言者が公証役場に行けない場合
また,遺言者が病気などで公証役場に行けない場合は,公証人が病院,施設,自宅などに出張して作成することがきます(公証人法18条第2項,57条)。その理由は,遺言は本人の単独行為で代理人ではできないこと,遺言者は高齢者が多いことなどです。
遺言者が署名できない場合
さらに,遺言者が署名できない(氏名が書けない)場合でも公証人が代署して作成でき(民法969条),また,口がきけない方や耳の聞こえない方でも,筆談や手話通訳を通じて遺言の意思を伝えれば作成できる(民法969条の2)ので安心です。
公正証書遺言の保管方法
公正証書遺言の原本は公証役場で半永久的に保管される(保管料は無料)ので,紛失・偽造等のおそれはありません。
公正証書遺言の正本と謄本
遺言者に対しては,公正証書遺言の正本と謄本を交付する(紛失の場合は再発行する)ので,遺言者の死亡後,この正本又は謄本を用いて速やかに遺言の内容を執行する(家や土地の名義変更や預貯金の解約・払戻しをするなど)ことができます。
公正証書遺言の有無を確認する方法
ところで,公正証書遺言については,遺言検索システム(全国では平成元年以降を登録)により,遺言者死亡後,相続人など利害関係者(受遺者・遺言執行者)は遺言をしたかどうかを,全国どこの公証役場でも照会することができます。
また,遺言者が生存している限りは,遺言をしたかどうかの相続人らから照会には一切応じません。秘密は厳重に守られますので,安心・安全です。
公正証書遺言の利点
以上のように公正証書遺言は,自筆証書遺言と比べて利点が多く,家庭裁判所の検認も必要ない(民法1004条第2項)ので,上記のとおり公正証書遺言があればすぐに遺言執行できるので,公正証書で遺言をしておく価値は十分にあります。そのため,公正証書で遺言をする人が年々増加しています。
次回は,公正証書遺言の作成手順についてお話します。
公正証書遺言は,自筆証書遺言に比べてメリットがある